アウトドアショップ・ELK(エルク)

掲載日:2020/6/12 (更新日 2020/6/25)

Vol.2

OUTING PRODUCTS ELK 体験しないとわからない!アウトドアスポーツの魅力を発信し続ける

 

キャンプや登山用品はもちろん、あらゆるアウトドア用品を揃え、アウトドアの楽しさ、自然の素晴らしさを伝えてきた創業35年のアウトドアショップ・エルク。自身もアウトドアスポーツに魅了されてきた代表の柳澤仁さん、そして息子の隆広さんに、その魅力や、山梨の素晴らしい自然環境について語っていただきました。

 

弟子入りの夢から一転、アメリカを放浪して気づいたこと

エルク代表の柳澤仁さんが、甲府に店を構えたのはおよそ35年前。26歳の頃でした。当時からフライ・フィッシングが好きだった仁さんは、鰍沢町出身のライターである芦沢一洋氏が立ち上げた団体、ジャパン・フライフィッシャーズに加入。芦沢氏がまだ日本にアウトドアという言葉自体が普及していなかった時代に、キャンプやカヤック、カヌー、マウンテンバイクなどのアウトドアスポーツを紹介していた、日本アウトドア界の草分けに属する人物です。そんな黎明期に日本のアウトドアの最先端を芹沢氏のもとで体験していた柳澤さんは、どんどんその魅力にのめり込むようになりました。

 

エルク

 

その結果、趣味が高じてフライ・フィッシングのロッド(釣竿)を作る職人に弟子入りしようと、単身アメリカに渡ったのだそうです。

「300万円ほどお金を貯めて、芹沢さんに紹介してもらった3人の職人の方を訪ねたところまでは良かったのですが“日本に技術を持ち帰られるのは困る”と、すべて断られてしまいました。一生アメリカで暮らすという条件を出され、決断できなかった。それで夢破れてしまって、さあどうしよう、と。」

 

弟子入りするつもりで貯めた300万円。それを使ってできるだけ長くアメリカにいようと考えた柳澤さんは、車やキャンプ道具を買い揃えて、そこから1年半、アメリカを放浪することになります。

 

「カリフォルニアからネバダ、コロラド、ワイオミング、モンタナ……。アメリカの西側を中心に回りました。これが本当に楽しくて仕方がなくてね。こんなに楽しいことは今までなかった。今でも本当にそう思うほどです。日本では体験したことのなかったアウトドアの楽しさを思い切り味わえたし、何より向こうの人たちは余暇を本当に楽しんでいることに気づいたのです。日没が遅い地方などは特に、仕事が終わってもまだ外は明るい。彼らはアウトドアでのいろんな楽しみ方を知っていました。ロッドビルディングでは夢破れたけれど、この楽しさを日本に持って帰りたい、伝えたいという気持ちになって、できるだけアメリカでうんとアウトドアを体験して帰ろうと決めたのです。」

 

エルク

 

 エルク

▲登山、クライミング、サイクリング、カヌーなど、店内には種類豊富なアウトドアスポーツ用品が揃っています

 

エルク エルク

▲アウトドア関連の書籍も充実。

 

ソロの時代だからこそ、必要なのはマナーやルールを伝える場

日本に帰国した仁さんは、エルクをスタート。その後数年で、巷にキャンプブームが到来します。当時のキャンプ人気は凄まじく、猫も杓子もキャンプという時代だったそうです。

 

「当時はファミリーキャンプが中心でした。甲府市総合市民会館を借りてキャンプイベントを開催したこともありましたね。3日間開催して、全日大盛況でした。今ではちょっと考えられないことです。」

 

近年、キャンプ人気が再燃していますが、当時と違うのは、現在は焚き火を中心としたソロキャンプが主流になってきているということです。第一次キャンプブームの時には仲間で山岳会などに参加し、知識やルール、山でのマナーを学ぶことが当たり前でした。しかし現在の第二次ブームでは、インターネットの専門サイトや動画などを参考にすれば、知識も1人で簡単に身につけることができます。そのため、山岳会へ参加する人も非常に少なく、マナーやルールを知らないためにトラブルや事故が起きることもあるそうです。

 

 

 

「特に山登りやトレイルランニングなどは、ルールを知らないことが怪我や命を落とす事故につながる可能性があります。私も11年ほど前から仲間で集まって、毎週土曜日に湯村山でトレイルランニングの朝練(※1)をしているのですが、始めた当初は登山をされている方々にたびたび注意されました。静かな山道で、後ろから声もかけずに走って追い越す人がいたためです。そういう時には驚かせないように追い越す前に声をかけるとか、他にもすれ違う時に道をゆずる場合は登りが優先であることや、ゆずる人は山側を背にして身を寄せることなど、登山家の中では当たり前のマナーやルールがあります。これらは厳しい自然の中で安全を確保するための知恵です。1人で気軽に始める楽しさも良いとは思いますが、やはりアウトドアスポーツでの行動は時に命の危険があるということを伝える機会や場所は必要です。楽しみ方はもちろん、リスクを回避するためのルールを伝えていく役割が、これからもっと求められてくるのではないかと感じています。」

 

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▲※1柳澤社長が始めた、湯村山を走るトレイルランニング通称「ユムラン」。

予約の必要はなく、「待たない・約束しない」がモットーというユムランでは子どもから高齢者まで様々な世代が思い思いのペースでコースを回っています。

 

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▲「ゆるきゃん」にも登場したエルク。関連グッズも充実。

 

 

山梨はアウトドアスポーツの環境に恵まれた、随一のエリア

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「甲府も含めて、山梨は本当に素晴らしい環境だと思っています。ピオレドール賞という優秀な登山家に贈られる国際的な賞を受賞した日本人7人のうち、4人は山梨県内に住んでいるのです。それだけ、アウトドアスポーツにとってベストな土地であると言えます。

中でも特に私が日本随一と思っている場所は、片山です。何しろ、富士山が見えて、北岳が見えて、間ノ岳が見えて、北アルプスが見える。日本で標高の高い山ベスト4を臨めます。さらに、甲斐駒、八ヶ岳、金峰山も見渡すことができるのですから、こんな場所は本当に他にないでしょう。しかし、実は地元にいてもこのことを知らないという人も多いのです。せっかく郷土にいるのであれば知って欲しいものです。」

 

首都圏からも訪れやすく魅力も多い山梨県のフィールドですが、いまだに人気は北アルプスの方が高いのも事実。最近はだいぶ変化しつつあるとは言え、まだまだ山梨の楽しみ方を打ち出しきれていないと仁さんは言います。

 

「山梨の楽しさが伝わりきれていないのは悔しいですね。この辺りの人間は、良さを伝えたり、来て欲しいとアピールすることが苦手な人が多いように思います。アウトドアスポーツの楽しさは体験しないと絶対にわかりませんから、とにかく来て、体験してもらえる工夫が必要です。もちろん楽しいだけではなく危険も隣り合わせなのがアウトドアスポーツの特徴ですが、この楽しさは格別ですからね。」

 

アウトドアはブームからベーシックへ

アウトドア先進国と言える北欧地域では、幼稚園や小学校にクライミングボードがあり、子どもたちがクライミングを日常的に行うのだそうです。

 

「ヨーロッパでは体のバランスと心のバランスは連動していると考えられており、バランス感覚を養うためにアウトドアスポーツが活用されているのです。このことを知ってから、私はより一層アウトドアスポーツを広めていきたいと思うようになりました。心と体のバランス感覚が養われれば、不安定な子どもや、キレやすい子どもが減るかもしれません。日本も北欧のように、今後はそういう取り組みが必要になってくる、重要になってくるのではないでしょうか。」

 

柳澤さんにはこんな経験があります。

「私の主催するアウトドアイベントに、ある引きこもりの青年が参加しました。自分の身体を使って自然と向き合っていくと、自分ができること、できないことがはっきりとわかります。彼も、自然の中で過ごすうちに自分を苦しめている余計なものから解放されるというか、等身大の自分を知り、受け入れられたのかもしれません。そして自然の中で自分の出来ることが増えると自信に繋がるのです。彼はその後、引きこもりの状態から脱したと聞いています。」

 

 

創業当時は「自動ドアの会社ですか」と聞かれたというほど、アウトドアという言葉は浸透していなかった、と仁さん。そこから第一次キャンプブームが訪れ、アウトドアスポーツの盛り上がりがありました。そしてアウトドアスポーツというジャンルが細分化していき、第二次のキャンプブームの現在を経て、これからはベーシックなものへと定着していくのかもしれません。

 

エルク エルク

 

エルク エルク

 

しかし、かつては一般的なスポーツショップも含めると12軒ものアウトドア用品店があったという甲府盆地で、ブームとは裏腹に今やその数はたったの2軒。

 

「物販品はすべてオンラインで購入できる時代です。物を売って店舗を経営しても利益を出すことはだんだん難しくなっているのが現実で、店舗としての価値は物販以外になりつつあると感じています。今後は、講習会やツアーなど、我々が培ってきた技術や経験を伝えていくこと、物だけでなく体験を売ることにシフトする必要があると考えています。

甲府を訪れたお客様にエルクに行ってみようと思ってもらえるように、“ためになる・とくになる・たのしくなる”の3要素を徹底して、今後もこの地で頑張っていきたいですね。」

 

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▲看板犬ダンテ。グッズも販売されている人気犬です。

 

山梨でアウトドアアクティビティをするという、「体験」を商品に

 

2019年に東京からUターンしてきた、息子の隆広さんは、今までエルクで同好会のような形式で実施していた登山のツアーやアクティビティをもっと広くたくさんの人に楽しんでもらいたいと、アウトドアアクティビティを提案する株式会社GATES(ゲイツ)を立ち上げました。

 

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▲GATES代表の隆広さん。

 

「世の中の流れが、体験というものにフィーチャーされてきていると感じていることもあり、山梨の自然やアウトドアでのスポーツ、アクティビティの楽しさをもっと発信することができれば、私たちだけでなく、甲府市、ひいては山梨全体への経済効果や雇用促進にもつながるのではないかと考えています。」

 

父親である仁さんのもとで、幼少期から自然と向き合い、アウトドアを楽しんできた隆広さん。アウトドアでのスポーツやアクティビティの経験は、他では得られない体験であり、その感覚をしっかりと魅力として発信していきたいと意気込みます。

 

「四方を豊富な山岳資源に囲まれているのは山梨ならではの魅力で、非常に貴重なエリアだと思っています。山梨と言えば富士山というイメージが強いかもしれませんが、決してそれだけではないのです。とは言え、私も県外に出てある程度年月を経たからこそ、山梨の魅力を感じている部分はあります。もしずっと山梨にいたとしたら、当たり前なこととしか捉えられなかったかもしれません。そういう意味では、地元の人は気づいていないことも、外部から見るとものすごく魅力的ということがまだまだたくさんあるでしょうね。」

 

体験に付加価値をつけた展開をしていきたいという隆広さんですが、すでに先日乙女湖でアクティビティ体験会を実験的に実施したそうです。

「湖畔にサウナテントを張ったり、カヌーやスタンドアップパドル(サップ)に乗ったり。実際にお客様に体験として楽しんでいただけるアクティビティを他にも用意して、どんどん伝えていきたいと考えています。山という自然環境がもっと楽しめる存在だということを広く知ってもらって、山梨の地方創生にも貢献できれば嬉しいです。」

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INFORMATION

アウトドアショップ・ELK(エルク)

企業名/エルク
所在地/〒400-0047 山梨県甲府市徳行4-13-9
電話/055-222-1991
ホームページ/
エルクhttps://www.elkinc.co.jp/
GATEhttps://www.gatesinc.org/