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甲府市で操業している理由:この場所だからこそ、私たちのワインがあると思います。
市内中心部から車で約20分、レストラン、チャペルやワイナリーを擁する甲府ワインポートの裏手・大蔵経寺山麓には、新緑もまぶしいブドウ畑が広がり、甲府盆地と富士山が一望できます。
「祖父の代から甲府市桜井町で農業をしていて、今の会長がレストラン事業を始めました。その後、レストランに加えて、ブライダル、ワイナリーと徐々に会社の規模を大きくし、今に至ります。甲府市で仕事を続けている理由をあまり意識したことはないですが、県外から訪れるお客様には、普段の都会の喧騒とは違って、落ち着けてよいと言っていただいています。私自身も落ち着いて仕事ができます。」
2000年、ワイナリー「ドメーヌQ」を設立。今まであった農地や耕作放棄地など、一気に現在のブドウ園に変えました。
「もともとワイン好きだった会長が、自分の土地で作ったぶどうからロマネ・コンティのようなワインをつくりたいという想いから始まりました。昔この地域には、村の方が集まってワインを作る共同醸造所があったのですが、そういった文化もここでワインを作りたいという想いに繋がったのかもしれません。」
ドメーヌQでは、当初から日本では栽培が難しいといわれるロマネコンティの原料ピノ・ノワールの栽培に挑戦します。
「ロマネ・コンティは『ワインの王様』といわれています。ワインを作る人間として、ロマネ・コンティのような世界最高のワインを目指したかったのです。またワイナリーとしては後発組ということもあり、他社と同じものを作ってもその中で埋もれてしまいます。それなら他にはないものをつくろうと思いました。」
設立当時、栽培の難しさからピノ・ノワールを栽培しているワイナリーは、日本にありませんでした。
「まず苦労したのは、ピノ・ノワールの苗木が揃わなかったことですね。ブドウは接ぎ木をするんですが、ピノ・ノワールを扱っているところがないのです。ですから最初は自分のぶどう園で選定したピノ・ノワールの枝を苗木屋さんにお願いして接ぎ木していました。また国内での栽培がされていなかったので、こうすればいいという手本がない状態でした。山梨の湿度や暑さなどピノ・ノワールには適さない要因もあって、教科書通りの作り方ではうまくいきません。栽培が軌道に乗るまでの数年間は、試行錯誤しながら山梨の風土に合った栽培方法を見つけていく毎日でした。」
風土に合った栽培方法、試行錯誤の経験から学んだ知識と同様に重要だったのは、ブドウ園とワイナリーの近さでした。
「ワインづくりでいえば、ブドウの品質を保っていられるのは、この立地のおかげです。
ピノ・ノワールは、雨の降る前に収穫するのがベストなのです。雨が降って時間が経ってから収穫すると玉割れなどが発生し、ブドウの実が傷ついてしまいます。だから『この日に収穫するから人を集めて』と収穫日を決めることはできません。まさに天候次第です。
私たちのワイナリーの場合は、裏手の大蔵経寺山麓にブドウ畑があるので、天候によってはすぐに収穫に行けますし、日頃の手入れや管理も迅速に対応できます。
また日本一早い新酒としてみなさまにご愛飲いただいている『ヌーヌーボー』は、『青デラ』といわれるこの地域の特産品デラウェアが成熟する前の淡い緑色の実を使用しています。甲府市桜井町でなかったら、『ヌーヌーボー』も誕生しなかったでしょう。この場所だからこそ、私たちのワインがあると思います。」
企業の特徴:世代を超えて愛される味を守りたいですね。
甲府ワインポートの主体となっているレストラン「ボルドー」は、日本で初めて牛肉のステーキを「ビフテキ」として目方売りしたレストランといわれています。
「今年創業44年目になるレストラン「ボルドー」は、ステーキハウスとしてご家族何世代にわたって食べにきていただいているお客様もたくさんいらっしゃいますし、若いお客様にも将来お子さんやお孫さんと一緒にお食事を楽しんでいただけるように、味をしっかり守りながらやっています。」
ワイナリー「ドメーヌQ」では、ピノ・ノワールを使用したワイン以外にも、日本一早い新酒として地元産「青デラ(デラウェアが成熟する前の淡い緑色のブドウ)」を使用した「ヌーヌーボー」が人気です。
「ピノ・ノワールでワインをつくる前に、ほかのブドウで工程の確認をしようと考えていました。会長から『地元に青デラという熟す前のデラウェアがあるから使ってみたら』と言われたのが、青デラとの出会いです。果汁を飲んでみたら、体験した事のない酸味の強さに驚きました。」
そしてこれをどういうワインに仕上げようか考えます。
「当時、会長がドイツワイン協会に入っていて、私自身もすごくドイツワインに興味がありました。そこで、ドイツワイン風の男性女性問わず、柔らかな酸味のあるワインにしようと思いました。」
そのワインが完成したのは8月。社長自身、意図したわけではありませんでしたが、熟す前のデラウェアを使うため、醸造も他のワインより早い時期になり、結果的にどこよりも早い新酒になりました。
「ピノノワールを作る前のテストだったのですが、作ってみたら評判が非常に良く、どこよりも早い新酒としてのアピール度も高い。そして地域の特産物デラウェアも活かせる。特産品としても地域を盛り上げることができるかもしれないと思いました。名付け親は会長です。ヌーボーより早いワインということで、『ヌーヌーボー』に決まりました。」
社員教育・人材育成:得意な部分を伸ばし、苦手なことはフォローしていきます。
「全部門で共通して意識しているのは、「常に流れを止めない」ことでしょうか。例えば1年のうち、特定の時期しかとれないブドウからワインを作るまでの工程は、時間的にも作業的にも途中で止められません。一連の流れがどこかで止まってしまうと、ブドウの質もワインの質も落ちてしまうし、最悪の場合、ワインはできません。レストランも同様に、お客様が来て食事をして帰るまでの接客の流れがどこかで止まってしまえば、お客様に迷惑がかかってしまいます。
その流れの中には、私ができても、相手ができないこともあります。
できない人に無理にやらせていい結果が生まれるかどうかわからないなら、その人の得意なところを伸ばして、苦手な部分はみんなでフォローした方がいいと思っています。接客もワインづくりも流れを止めないための最善を尽くすように心掛けています。」
会社の抱える課題と対策:若い方々に知っていただくためのイベントを計画しています。
「有難いことに20代以上の世代の方には、私たちのことを知っていただいています。ただ、20歳前後の若い方たちの間では、ボルドーを知らない方が少しずつ増えてきていると思います。若い世代の方たちに私たちのことを知っていただいて、ここに足を運んでいただけるように、今は情報発信やイベントを計画しています。」
未来に向けて:まず、仕事のやりやすい会社にしたいと思っています。
そして人が集まって楽しんでもらえる場所になっていきたいですね。
「まず、仕事のやりやすい会社にしたいと思っています。
それぞれが得意な部分を活かして、仕事がやりやすくなれば、業務の質や効率も上がり、お客様からもいい評価をいただけると思います。
仕事をしやすい環境を作っていけば、会社も盛り上がっていけるんじゃないかな。
人が集まって楽しんでもらえる場所になっていきたいと思っています。
ここでしかない風景、ここでしかないお料理、雰囲気を大切にして、地域と一緒にがんばっていきたいなと思っています。」